「無視すな」

ギュッと繋がれた手に力がこめられた。

(握るな、クソボケ!)

まやは心の中で暴言を吐いた。

「たまに…もう少し言うなら、年に1回くらいで充分だと思います」

仕方なく、まやは返事をした。

「ね、年に1回って七夕かクリスマスやないんやから…」

狼谷は苦笑いをした。

「でも姉ちゃんの言う通り、歩きでの送り迎えにして正解やったわ。

車やったら運転に手がいっぱいで、こうしてまやと手を繋ぐことなんてできへんもん」

楽しそうに笑いながら言った狼谷に、まやはドキッ…と自分の心臓が鳴ったことに気づいた。

(手ェ繋いだくらいで、何をえらそうに言っとるんや。

別に何も変わらんやろが)

心臓の音を隠すように、まやは心の中で呟いた。