「もうしゃーないな」

狼谷がそう言ったかと思ったら、
「えっ、ちょっと…!」

突然のことにまやは驚いた。

「何や、まやが悪いねんで?

先行こうとしたまやが悪いんやから、これくらいのことしてもバチなんて当たらんと思うで」

狼谷はそう言って、繋いでいる手を見せてきた。

通称・恋人繋ぎをされたその手は、まやの手と自分の手を上手に繋いでいた。

「ほな行こか」

手を繋いだまま、まやと狼谷は歩き出した。

(何がおかしくて、いい年齢をしている男女が手を繋がなあかんねや)

さり気なく手を振って離すように求めても、繋がれているその手が離れることはなかった。

「こうして2人で歩くのも、案外ええもんやな」

狼谷が話しかけてきたが、まやは答えなかった。