見抜かれてしまった以上、仕方がない。

「狼谷さんも人の子だったんだなって思っただけです」

まやは言った。

「人の子って…わいは化け物の子か何かと思とったんかい」

すねたように言い返した狼谷がおかしかったので、まやは吹き出したい気持ちをこらえた。

「まあええわ、ほな行こか…って、おい!」

狼谷がまやに視線を向けた時、彼女はすでに歩き出していた。

「ちょお、待ってーな。

せっかく一緒に帰ろ思たのに」

走ってきた狼谷がまやに追いついた。

「もう少し長くなると思ってたので早めに」

追いついた狼谷に声をかけたら、
「だからと言って、何も先行かんでもええやないの」

狼谷は呆れたと言うように言った。

(ホンマのことを言うなら、すねたおのれの顔がかわいかったなんて口が裂けても言えんわ)

吹き出したい気持ちはあったのだが、それよりも先に彼をかわいいと思ってしまったのだ。