「えっ?」

まやは訳がわからなかった。

ふと彼の後ろに視線を向けると、いつもの高級車が止まっていないことに気づいた。

「車はどうしたんですか?」

いつものように車で迎えにくるかと思っていたので、まやは聞いた。

「今日――と言うよりも、今か――から歩いて送り迎えをすることにしたんや」

そう答えた狼谷に、
「何でまた急にそんなことを…」

まやは言った。

一体どう言う心境の変化なのだろうか?

「今朝、何も言わんと仕事に出かけたやろ?

そのことを姉ちゃんに愚痴ったら怒られてしもたんや。

“毎日のように高級車で送り迎えしてたら、あの子だって逃げるに決まっとるがな”ってな」

狼谷は笑いながら言った。