「仕事でヤなことでもあったんか?

あったんやったら話した方がすっきりするで」

「それも違います」

昼休みに言われた倉坂からの言葉がまだ胸に残っているなんて言える訳がない。

「何か遠いな。

ものすごい近くにおるはずやのに、ものすごい遠くに感じるわ」

悲しそうに言った狼谷に対し、まやは言い返そうと思わなかった。

(別に近くにきて欲しいなんて思てへんもん。

どうせ人なんて、どんなに親しくなったとしても平気で裏切るんやから)

心の中で呟いていたら、
「ついたで」

狼谷がそう言って車を止めたので、まやは車を降りた。

「ほな、いつもの場所に行って車止めてくるわ」

まやが車から降りたことを確認すると、狼谷は車を発車させた。