「38階の経営コンサルティングの会社に義兄さんが働いとるんやわ。

この前は姉ちゃんが午後の会議に必要な書類を忘れたって言う連絡が義兄さんからきたから、それを届けにきた帰りに産気づいてしもうたらしい」

「ああ、そうなんですか…」

そのことに関してはどうでもいい。

妊婦だった彼の姉を助けたせいで、自分はこんなことになっているのだから。

「話を戻すけど、娘があまりにもかわいらしいから義兄さんが芸能事務所に応募しよかなんて騒いどるんや。

もうすっかり親バカやで」

ハハッとおかしそうに笑った狼谷から視線をそらすと、まやは前を向いた。

「話、おもろなかったか?」

そう聞いてきた狼谷に、まやは首を横に振った。

「おもろかったら、笑てもええねんで」

そんなことを言って欲しかった訳じゃない。