「まやが心配やからやないかい。

夜に女が1人で歩くっちゅーのは危険なことやで。

まやの身に何かあったらと思うと、心配でしゃーないわ」

狼谷は高級車のドアを開けると、まやに乗るようにと促してきた。

「そう言うのを世間一般では“過保護”だとか“お節介”だとかって言うんですよ。

私、中学時代は陸上部に所属していたので脚力には自信があるんです。

何かあったとしても、その場からすぐに逃げる自身がありますので」

助手席に座りながら言い返すと、
「いつの時代の話やねん。

中学って言うたら、もう15年も前の話やないかい」

狼谷がすぐに言い返してきた。

「元陸上部をなめない方がいいですよ。

毎日出席していたからと言う理由で部長もやっていましたから」

「そこは実力じゃないんかい」

漫才のような狼谷のやりとりになれてしまった自分が悲しくて仕方がない。