少し覚悟をしてたから、黙ってケータイを受け取る。

『もしもし。はじめまして。須藤潤と申します。』

覚悟はしてても緊張して、声がこわばってしまったのはしょうがないよね。

どんな言葉を言われるのかな。

“潤さん…ごめんなさい!”

お母さんから勢いよく謝られた。

“少し聞いていたのよ。薺が何をして、あなたを傷つけて突然いなくなってしまったのか。でも、あなたは子供を守ろうとした母親だったのね。薺が離れていったと思ったから、責任を感じてほしくなくて、黙って去ったのよね…。薺の姉も単純な薺にバカなこと吹き込んで…姉弟でバカなんだからっ。一人で産んで…辛かったでしょう?孫を産んでくれて…ありがとう。”

お母さんは泣きながら一気に話すと、はぁっとため息をついた。

私も受け入れてもらえたことに、涙が止まらない。

“潤さん。よかったら、孫を見に行ってもいいかしら?”

『はい。本当は私が日本に連れていけたら、いいんですが…まだ息子は2ヶ月になったばかりなので。いつでもいらして下さい。お待ちしてます。』

“ありがとう!すぐに会いに行くわ!”

元気よく、お母さんは宣言してくれた。

こんなにすぐに認めてもらえて嬉しい。

“薺、また情けないことしないのよ!薺が何かやらかしても、孫は私達の孫に変わりないんだから、次はもう潤さんにあんただけ捨ててもらうからね!”

薺母強し。

「わかってるよ!見限られないように頑張るから。」

薺弱し。

慈季の写メを送ることを約束して、電話を切った薺。