さすが、忘年会シーズン。いつもは友達と来る馴染みの居酒屋が3割増しで賑わっている。


私の真正面で焼き鳥を口に運ぶ崇哉を眺めながら、ちょっとだけ緊張した。


誘ったのは私のほうからだった。


デート。とまではいかなくとも、私が特別な気持ちを持って勇気を出したことに、この人は気付いているのだろうか。


一緒にお酒が飲みたかったわけではない。ほんとは違う店でもよかった。崇哉とごはんが食べたかった。




「この店良いなあ」




くしゃりとした笑顔でつぶやいた崇哉にハッとして顔を上げれば、彼は二本目の串に手を伸ばしていた。




「雰囲気がいいね。料理も酒もうまいし。よく知ってたなー」


「そうでしょ、……友達とよく来るの」


「ふうん。男?」


「えっ、あ、……ううん。普通に、女の子の友達」




慎重に言葉を選んで伝えたけれど、崇哉はそれ以上この話題を広げることなく、もう一度だけふうんとつぶやいた。