「先生もな、あいつに口止めされててなぁ」
教壇に立つ担任が両手を合わせながら苦笑いを浮かべている。
クラスメイトたちのブーイングが耳を刺す。
「口止めって、ちょっとは気利かせろよ!」
「私達、なんもしてないじゃん!送別会とかは!?」
「え、いつなの?いつ出発?」
身体の芯から、冷えていくような感覚。
私は今、どんな表情でこの場にいるのだろう。
どういうこと?
嘘、でしょ?
「出発は、今日らしい。昼前の新幹線で経つって」
「え、もう間に合わねえよ!!」
私は1人、何も口に出来ず呆然としていた。
先程の、担任の言葉が何度も頭の中をこだまする。
河村は親の仕事の都合で転校することになった。
大阪に、引っ越すらしい。先週がラストだったんだ。
手短なその言葉は、あまりにも残酷すぎた。
私は一言も転校のことを聞いていない。
そんな素振り、彼は見せなかった。
そんな様子っ、……。
――…彼の、様子?
あぁ。私は、
(なんて、馬鹿なんだ。)