「、なんで」


本気で私に、別れを告げているんだと思う。


「なんでって、…別れるのに理由は必要?」

「は、?」

「もういいんじゃないの。そろそろ潮時、でしょ」


目の前の人は、私が困惑しているのを見て冷たい視線を送ってくる。
蔑むような、そんな小さな笑みを携えながら。

こんな顔、私は知らない。
私の彼はそんな表情、しない。
こっちが泣きたくなるような、そんな声、私は知らない。


「――お願いだから、別れてよ」



もしかしたら、彼は最初から私なんかに興味がなかったのかもしれない。

そう思ってしまうほど、こっぴどいふられ方だった。
私が柄にもなく涙を流して首を横に振っても、彼は溜息を吐くだけだった。

それでも彼は、少し後ろめたい気持ちを抱いてたのかもしれない。
この別れに。

だから最近、あんなに、私に優しかったのかもしれない。
今までにはなかった、愛の言葉を囁いたりしたのかもしれない。
最後に夢でも見せてやろうって、そう思っていたのかもしれない。

無理矢理自分を納得させないと、どうにかなりそうだった。

全部、どうでも良くなった。

私は彼に、ふられたんだ。




一瞬だけ、呼吸の仕方を忘れた。