「ほんとにごめん。俺でごめん」

「、後藤くん、何言ってるの…?」

「ごめんね、浅井さん」


マドンナが困ってるのが目に見えて分かる。


俺は、自分が泣いてるんじゃないだろうかってくらい、胸が痛かった。


今までの全部、振り出しに戻したいと思った。

俺が変な妄想をするところから、全部。

そうしたら、こんなに辛いことも俺には起こらなかったのに。

俺は普通の人間のまま、普通に暮らしていたのに。


こんな感情、欲しくなかった。


「ごめん、本当に」

「ね、ねえ、何が?どうしたの…?」

「……本当は俺じゃなくて、あの人と、観たかったんでしょ?」


馬鹿だ、俺は。

ちょっとしたことくらいじゃ消えてくれなさそうなこの気持ち。

無駄だと早く気付いて、早く蓋をするべきだったのに。


もう遅いなんて、馬鹿以外の何者でもない。


「俺じゃなくて、本当はあの人が良かったんでしょ?」

「……ごと、」

「君の好きな人は、――さっきの人なんでしょ?」


その瞬間、彼女の目が大きく開かれた。


やっぱり、ビンゴって、…ことですか。