「後藤くん?」


どれくらいの時間が経ったんだろうか。

俺の目の前には彼女しかいなくて、辺りはもう薄暗くなり始めていた。


彼女の同級生の登場が、夢だったんじゃないかと思えた。


でも現実はそんなに甘くない。


「ごめんね。待たせちゃって」


申し訳なさそうな表情の彼女を見ていると、何が本当か分かる。

夢なんかじゃない。

彼は確かに先程までここにいた。


帰りたくないと思っていた。

彼女と出かけることなんてもうこの先ないだろうから。

もっともっと話がしたいと思っていた。


でも今は嘘みたいに。

早く、帰りたい。


「…ごめんね、俺で」

「え?」

「今日一緒に映画見たのが、俺でごめんね」


本当にろくでもないやつだと思う。俺は。


彼女に悪いところなんて一つもない。

俺が勝手に調子に乗って、勝手に落ち込んでいるだけだ。


勝てない。勝てる気なんてするはずがない。

俺なんかは、勝負するにも値しない。あの人と。