それから、なんだか他愛もない話をしていた。


この前健人が授業中に白目を剥いて寝てたとか。

俺たちの担任がついにお見合いするようになったとか。(彼女は37歳、独身である。)

何もないところで躓いて恥ずかしかったとか。


本当にくだらない話。

学校で話す内容とそう変わらない、いつも通りの話。


でも俺は彼女と一緒にいるってことと、彼女の可愛さにテンションが上がっていて。

いつも以上に饒舌だったと思う。

彼女がそのことに気付いていたのかは分からないけど、いつも以上に話が盛り上がったのは確かだった。



こうやって彼女と話していると、見つめるだけだった日々が嘘のように思える。


ずっと、ずっと。話したかったのに。

今普通に彼女が目の前にいるんだから、世の中ってものは分からない。



気付いたら相当店に居座っていたようで、オムライスを運んでいた店員さんに声を掛けられた。

そりゃ食べ終わったら早く出ていって欲しいよな。

客の回転が悪くなるし、ね。


俺たちは店員さんにぺこぺこ頭を下げて、店を出ることにした。


店から出た時にはもう、空は茜色に染まりかけていて。

どれだけ話してたんだろうって、2人で笑った。