「今日は付き合ってくれてありがとうね!」
付き合ってって、そういう意味ではないことは分かっているのに、心臓は妙な鼓動を刻む。
これは彼女のことが好きだって、そういうしるし。
「いや、…こちらこそ誘ってくれてありがとう」
彼女が俺を誘ってくれた時のことを考えると、嫌でも彼女の好きな人のことを思い出す。
それと同時に胸は苦しくなる。
彼女に、あれほど優しい表情をさせる人。
俺の、ライバルであるんだろう人。(勝ち目なんて、これっぽっちもないんだろうけど)
なぜ、俺が誘われたんだろうか。
相手は都合でも悪かったんだろうか。
「もうちょっとで冬休みだね」
「後、1ヶ月も先だけどね」
「ま、そうなんだけど」
彼女は笑いながらオレンジジュースを口に含む。
伏せられたまつ毛が、その長さを物語っていた。
そうだ。あの日もこうだった。
日直日誌を書いてる彼女に、俺は単純に見惚れてた。
マドンナと日直だって思い上がって、興味本位で彼女の瞳の色を確かめて。(変態かっつーの)
特別な感情なんて1ミリもなくて。
ただ、どこか遠い人のように彼女を見ていて。
あの時はこんなことになるなんて思ってもみなかった。
全て。何もかも、想像すらしてなかった。
こんなに普通な人間である俺が、普通だと言われたことがなさそうなマドンナを好きになるなんて。