固まっている俺を見たらきっと、健人は大爆笑するんだろう。
自分でもちょっとおかしい。
こんな、がちがちになりながら映画を見ることってなかなかないと思う。
しかも今見ている映画はアクション映画。
……うん。笑える。
マドンナのさらさらな髪は、今日はなんだかふんわりしていた。
俗に言う、巻くってやつだろうか。
(女の子の事情はいまいち分からない)
可愛らしいブラウンのブーツに、もこもこしたショートパンツを履いてる彼女はまさに女の子だった。
いや、男とか女とかそういうんじゃなくて。
普段は綺麗系の彼女が、今日は可愛かった。
そんな彼女が隣りに座っているんだから、緊張するのは当たり前だろう。
緊張しない訳がない。
それほど、俺は目の前が回るくらいに緊張していて。
映画の内容なんてほとんど頭に入ってこなかった。
「すごかったねー。CG技術が高かった!」
テーブルの奥に座っている彼女はにこにこしながらオムライスを頬張っている。
「(なんという幸せ…)」
彼女の笑顔を独占できるなんてこと、そうあることではない。
先ほどよりかは幾分緊張にも慣れてきて、向かいに座るマドンナの様子を俺はのんきに眺めていた。