俺はすぐに男から目を逸らした。

なんだか、視線だけで殺されそうだ。

こういう部類の人と関わることはまずないので、相手がどういう反応をするのか全く分からない。


「、浅井さん、ごめん。遅くなって」


とりあえず恐いので男に背を向ける。

俺はきっと、すごく情けない顔をしているんだろうけど今はそんなの関係ない。


早く、この場を離れた方がいいのかもしれない。


「…ってことで、あんたに興味なんてないから。どうぞお引き取りを」


その言葉に思わずぎょっとした。

それは、マドンナが冷たく紡いだものだった。


でもその視線は俺の後ろに向けられていて。


「は、馬鹿にしてんの?こんなやつより俺のほうがよくない?」


それに対して後方から聞こえてきたのはそんな言葉。

……なんとも言えない、けどさ。


「何言ってんだか。この人超える人なんて、いないから」




マドンナはきっと、この状況を切り抜けるためにそう言ったんだと思う。

でも正直、こんなの反則だと思う。


嘘だとしても、本当に。

思いを寄せている女の子に、こんなこと言われるなんて、

……反則だと思う。