それと同時に左肩に受けた衝撃。
思わず体が後ろに反れた。
「じゃあ、今週の土曜日、11時に北口ね!」
らしくないと思った時には、もう俺の目の前にはマドンナはいなかった。
教室を出ていく後姿だけが残像として残る。
マドンナが教室を出ていってから、やっと右肩の衝撃の正体を知った。
彼女が、俺の肩を押したんだ。
俗に言う、つっこみってやつだろうか。俺が変なことを言ったから。
なんだったんだろう。なんで急に教室を出ていったんだろう。
なんだか俺は全然自分の状況を掴めてなくて、ただマドンナが消えていった出入り口を見つめていた。
だから知らなかった。
マドンナが今どこにいるか。なんで、教室を出ていったのか。
というか、なんだこれ。
なんなんだ。
待ち合わせ場所に向かう電車の中で、俺は悶々と考えを巡らしていた。
イヤホンから流れる音楽も、右から左へと全く俺の中には留まらない。
あれから俺は、やっと事の重大さに気が付いた。
映画に見に行くってこと。マドンナと、2人で出かけること。
巷ではこれを、デートって言うんだろうか。
(経験のない俺には分からないことだ)