「――でね?後藤くん」
「なに?」
「一緒に、映画行かない?」
「うんいいよー……、って、え、あ?」
普通に、いつもの調子で聞き流すところだった。
……な、なんだって?
「見たい映画があるんだけど、洋画のアクションだからあんまり興味ある人いないんだよね。後藤くん、前にアクション映画好きって言ってたでしょ?」
題名を聞くと、ちょうど最近CMが放送されてて気になっているものだった。
だけど…。
「浅井さんと、俺が?」
頭に浮かんだ疑問はすぐに口から飛び出していた。
なんで、俺?それは、その…。
好きな人を誘えばいいんじゃないだろうか。
…それは俺にとっては喜ばしいことではないけれど。
そんな俺の言葉に、マドンナは小さく眉間にしわを寄せてみせる。
「私とじゃ不満?」
その表情に反して、彼女が発した声は弱々しいもので。
こんなにも負の感情を表に出す彼女を見たのは初めてだった。
いつも、何を言われても笑い飛ばしているマドンナなのに。
どうやら俺は、彼女に勘違いさせてしまったらしい。
相当悪い解釈をさせてしまったらしい。
一緒に行きたくないとか、そういう意味で言ったんじゃないんだけど。
「いや、そういうことじゃなくてっ」