「そう、私たちが」
そう言って彼女は綺麗な笑みを浮かべている。
こんな風に会話するなんて思ってもみなかったなんて、俺は普通に彼女の笑顔に見惚れてて。
健人はそんな俺を見て、にやにやした変な笑みを送ってきた。
俺がそれを知らんフリして済ませたっていうのは言うまでもないけど。
俺の気持ちを言葉にしてみろって言われたら、それ程難しいことってないだろってたぶん思うんだろう。
自分の気持ちは他人には分からないけど、自らの気持ちを自身で完璧に把握できてんのかっていうとまた話は違う。
分かる訳ない。
そんな、形もない不確かなもの。
でも俺には、日を追うごとに音もなくこの感情が大きくなっているっていうのは感じられる。
徐々に徐々に。コップに注がれた水はその重量を増す。
つまりあれだ。
そういう感じで俺は日に日にマドンナから目を離せなくなっていく。
何かの魔力すら感じるその姿。
捕らえたものは2度と離さない、そんな彼女の魅力に俺も捕まってしまった訳で。
好きだと思う、彼女が。
軽率に、世界中で1番好きだと、言ってしまえるかもしれない。
今、彼女のことが。