考えてもみたら俺は、昨日から驚くほど『夢じゃないか』って思ってる。


彼女が告白されている場面を見てしまってから、そもそも俺はおかしくなってたんだ。

今日だけでこれだけ頭が混乱してるのにも関わらず、昨日俺は何してた?

のんきにマドンナと本棚の整理をしていただろう。

小さな部屋に、マドンナと2人きりで。


…昨日の俺はそのことに何も思わなかった。

これがおかしいって証拠だ。(証拠を挙げたところで何も起こらないが)



「俺は洋楽かなあ」


そんな時、いかにも能天気と言える声が耳に届いた。

確かめなくても分かる。


「中田くんには聞いてないし!」


呼ばれてないのに飛び出す男。そう、中田健人だ。


「あ、そうなの?ごめんごめん」


へらへらと笑いながら俺たちの方に歩み寄ってきた。


「にしても珍しい組み合わせっすねー」

「昨日友達になったんですー」

「翔太と浅井さんが?」


健人の視線がどう見ても、お前何あったって語っている。

興味津々な表情を浮かべ、それを隠すつもりは全くないらしい。


マドンナが笑ってるぞ、おい。