とりあえず、美術室の近くに行けば分かるだろう。

そう思って教室を後にする。


放課後の、生徒がいなくなった廊下は部活生の声を反響させながら存在する。

俺の上靴の音が寂しげに響いていた。


本来、美術科準備室の掃除って宮崎先生本人がすることだろう。

会議があるって先程は言っていたが、その言葉自体本当かは分からない。

ちょうどいいところに俺がいたからって感じが否めないが…


それを放置して帰ることだって出来るんだろうけど、事実俺にはそんな勇気が備わってない訳で。

足は順調に美術室に向かっている。


棚の整理って言ってたけど、どれくらいの量があるんだろう。

出来れば早めに帰りたいなー。


美術室は旧館の2階にあって、そこに行くには教室がある本館1階の渡り廊下を通らないといけない。

遠くに吹奏楽部の楽器の音が聞こえる。

少し寒くなってきた頃、秋の風は俺の心に突き刺さりそうだった。


(今日も話せなかった、)


俺の馬鹿な妄想からはもう、2週間が経っていた。