彼女もそうなんだろうか。
食べ物と比べたら怒られるかもしれないが。
本当は好きな人がいて、その人を想ってるから、色んな人の告白を断ってるんだろうか。
だとしたら、彼女に想われてる人は世界一の幸せ者だなぁ。
俺なんて少し目が合うだけでどぎまぎしてしまうのに。
話し掛けることも出来ないし、話し掛けられることもないのに。
いるのかも分からない彼女の想い人に嫉妬してる時点で、俺はもう駄目なんだろうな。
何がきっかけか。
ただ少し意識し始めただけなのに。
彼女のことを、好きになってしまったんだろうな。
「モテないお前が一途とか言っても説得力ねえし、第一きつねうどんって」
「はいはい。一途って言葉を使ってみたかったんですー」
うどんを食べ終えた俺は箸を置いて、ちらっと彼女の表情を盗み見た。
「っ、え?」
「何?翔太」
「い、いや、なんでもない」
きっと俺の見間違いだ。
「なんだよ、気持ちわりいな」
俺が見た彼女は、頬を赤らめていた。
俺と目が合った瞬間、露骨に驚いたような反応を見せて。
何に対しての表情?見間違いか?
馬鹿な俺でも分かるのは。
そんな表情、俺に対してではないってことだな。