とにかく急げ!!



雪が降り積もって、この儚い目印を覆い隠す前に…。

月が、西に傾く前に…。

あの男が、アキを奪いに来るその前に…。





暗い森の中、アキの身体を抱いたハルは、途切れ途切れに落ちているその小さな跡を頼りに、息を切らしてただ走り続けた。


あの男が来る…

あの時、アキの命と引き替えに、俺は自分の命を差し出した。
後悔などしてなかった。

例えアキと自分とを繋ぐ大切な絆が断ち切られたとしても、
それでも、アキに生きていて欲しかったから…。

けれど、命を落とした筈の俺が生きていて、こうしてアキと一緒に居るのを知ったら、あの男は激昂して何をするかわからない。

でも、死んだ筈の俺が生かされているのには、何か理由がある筈なんだ。

それなら…

もう一度、違う形でアキを守るしかない。