雪は静かに降り続いている。
もう一度、夜空を見上げてみる。

そっか…クリスマス・イブだったな…。
ホワイト・クリスマスか…。
ハルは軽い溜息をつく。


紺碧の空を見上げると、舞い降りる雪を煌めかせている月が、頭上を覆う木の葉の隙間に、姿を現した。





ハルは弾かれたように立ち上がる。

何か大切なことが…
大切なことを…
忘れてないか?…

思い出せ…
思い出せ!!



――「月の姿が、天の西側に落ちる前まで待ってやる」――



あの男の言葉…
薄れ行く意識の中で、確かにそう聞こえた…。