『あのさ、恋･･･した事ある？』
突然のことだった。クラスメイトの男子からの言葉。
頭の中で木霊する。どういう事だ･･･？
そう、それはついさっき･･･。いや、つらい1時限目前だった。

*
｢おはよう｣
｢課題終わった？｣
なんて、私には無関係な何気ない会話が住宅地に響く。
時刻は午前8時。
恐らくあと30分ほどで学校に着くだろう。私は地面を見つめ、石ころを蹴りながら重い足を進ませていた。

何を隠そう、今日、10月8日は私の誕生日だ。もっとも、祝ってくれる人も覚えている人もいないだろう。静かに16回目の秋を迎えてしまった。

｢おはよ｣
皆、朝から元気なんだなぁ。
｢おーはーよーうっ｣
後ろからの声が私に向けられたものだと認識し、振り向く。
｢わ、私？お、はよ｣
｢不自然だなぁ｣

勢いよく振り向いたせいか、首が痛い･･･。私が首の後ろを押さえているとその女の子は話し始めた。

｢確か、A組の子だよね？えっとー･･･｣
｢ゆ、結城 雛とも、申します｣
｢なぜ敬語。ひな？めっちゃ可愛い名前じゃん、よろしく。ひなちん｣
｢よ、よろしく？｣

あぁ･･･こんなに人と話したの何日ぶりだろう･･･下手すると数ヶ月･･･？

｢ひなちんてさー｣
｢？｣
｢意外と面白いとこあるよね｣
｢馬鹿に･･･しないで下さい･･･さっきのはたまたま･･･寝違えたというか･･･｣