夜明け前、マシュは台所へ行き、魚の干物を口にくわえられるだけ、くわえると、一直線に山の斜面を駆け上って行きました。


マシュは生まれてまもなく、まだまだ母乳が必要で、引き離すには小さすぎて命の危険がある頃に、捨てられると同然に、あちらこちらと、たらいまわしにされたあげく、桜坂さんの娘に引き取られたのです。


子供の頃からの苦労を乗り越えて育っており、怖いものなしの性格でした。


ただ、あまりにも早く母親から引き離されたので、「チュパ、チュパ・・・」と腕をしゃぶり、乳を吸う仕草が抜けなかったのです。


マシュが目指しているのは山の部落長の住んでいる家でした。


どんどん山の斜面を駆け上っていくと、やがて大きな家が見えてきました。