「お前さ、名前とかあるの?」
「ニケだ。私はお前と呼ばれるのが嫌いだ。」

ニケ。
この会話の相手が同級生とかだったら、僕はきっとすぐに「ごめん」と返していただろう。

今回は相手が猫だ。心が少し動いた。申し訳ないという気持ちよりも先に、感心という感情がわいた。

「ごめん。これからはニケって呼ぶよ。」

あれ、謝ってる。僕ってこんなに意志薄弱だったかな………。

「やっぱりニケもマタタビとか好きなの?」
「ふん、あんなもの、ただの植物の粉ではないか。臭いだけだ。」
「へぇ。」
「人を疑る目をしている。本当だぞ?マタタビなぞ私は好かん。」

なるほど。やっぱりマタタビとか好きなんだね。

「ふん、まあいい。それより家はまだか。」
「後五分位だと思う。揺られて大変かもしれないけど、もうちょっと我慢してね。」
「致し方無い。耐えてみせよう。」

やけに高圧的な喋り方だ。良家の出なんだろうか。猫にも良家とかあるんだろうか。

「もう質問は終いか?スリーサイズ以外なら答えてやろう。」
「いや、あんまり興味ない………。」

場違いな発言が飛んできた。若干抜けている。天然?