再び目覚めた時、状況は何も変わっていなかった。
 どれくらい意識を失っていたのか分からないが、俺はまだ落ち続けていた。
 頭から真っ逆様に落下していた。
 延々と続く浮遊感に、全ての臓器が擽られているような、不気味な快感が縦横無尽に全身を駆け巡っている。
 かなりの速度が出ているらしく、風圧で目を開けていられない。
 それでも、何とか薄目を開けて落ち行く先を見てみると、果てしない穴が続いていた。
 横を見ると、恐ろしい速さで壁が過ぎ去っていく。壁の模様は、先程と変わらない。
 再び下に目を向ける。
 下を見ていると、落ちている筈なのに、逆に上に向かって飛び上がっているような、奇妙な錯覚に陥った。代わり映えのしない景色と状況に、三半規管が麻痺してきているのか。
 俺は強く目を閉じた。
 どの道この速度で着地すれば、そこに待っているのは確実な死だ。そんな理不尽な結末は、俺の精神の許容範囲を越えている。
 受け入れ難い現実から逃避する為の、それが最後の手段だった。
 俺は瞼に更に力を込めた。





 まだ生きている。
 まだ落下している。





 何故だ…。