「待ってよ!」

部屋を出て、人間の姿のまま、頭をポリポリ掻いているアルトに後ろから呼びかける。アルトはスタスタと歩いたまま、止まろうとしない。

「ちょっと!待ってったら。」

走ってアルトに追いつけば、アルトはクックッと笑って口元を手で押さえていた。

「何がそんなに可笑しいのよ?」
「別にー?」
「さっきから何を考えてんのよ?」

アルトがピタリと笑いを止めた。

「別に。本当に何も。」