「でも一回こっきりだよ!ちょっとしたイベントで使いたいんだ。」
「俺ァ別に鎌わねーけど、ブランの奴がどーだろーなぁ?」
「契約違反じゃない。別に戦闘に巻き込むわけじゃないし、危険なことはさせてないんだから。」
「ある意味、危険であります。」

最後のペングウィンの指摘に、レイリーは一瞬ウッと言葉に詰まったが、開き直ったようだ。

「別に、メイド服くらい普通じゃないか。」
「無駄にスカートが短いのと、ガーターベルト付きってのがやらしいけどな。」
「あのー…さっぱり話についていけないんですが……」

私を抜きに話が進んでいたところに口を挟めば、三人がグリンと首を回してこちらを見た。

「ルカさん、お願いだ。」

レイリーのクリンとした大きな薄緑の瞳が上目遣いで私を見つめる。

「謝肉祭でちょっとだけその格好でお仕事をしてほしいんだけど。」
「騙されんなよー。またこのガキなんか企んでやがる。」

アルトは寝転がった姿勢で、棒読みで忠告してくる。やる気があるんだかないんだか。

「ちょっと黙っといてくれるかな、狼の化身。」
「一応、忠告しといたんだよ。ブランの奴にごちゃごちゃ言われたくねーからな。」
「私(わたくし)は大賛成でありますっ!」

ペングウィンが嬉しそうに言うが、誰もその発言は気にしない。その時、唐突にギイと部屋のドアが開いて、見たことがあるような靴先が隙間から覗いた。