ケイレブの弟、ザッカリー・シーランドは、ケイレブ・シーランドの4つ下の弟であるが、ケイレブをそのまま若くしたかのような美貌の持ち主で、金髪碧眼で上品そうだが女性慣れしている雰囲気が目立つ人物であった。

「普通、”シーランド様”っていうと、あいつらの親父のフランクリン・シーランドを指す。だから巷ではファーストネームに様付けが一般的だ。」
「やっぱりそのお父様も偉い人なの?」
「ああ。フランクリン、ケイレブ、ザッカリー、三人とも街の常任メンバーの上にガチガチの右派で有名だ。」

アルトが関わりたくもないとばかりに、1番街の方角へちょいちょいと手招きする。

「どんな人たちなの?」
「全員派手好きで有名な一族だ。何かと自分らが資金を出した建物には家紋の入ったシンボルをつけたがるし、イベントごとになるとまるでこの街の顔かなんかのように毎度出てくる。多分、今度の謝肉祭も派手になんかするつもりなんじゃねーか?」

近道でもするつもりなのか、崩れかけた古い城壁の上にアルトは上がると、手を差し出して私も上がるように促した。

「フランクリンは昔から知られている保守派の重鎮で、長男のケイレブはその考えをそのまま受け継いでる感じだ。次男のザッカリーもいつもケイレブにくっついてて右派の洗礼を受けているのは確かだが、女たらしでギャンブル好きなところは真面目なケイレブとは少し違うところだな。…あと、北の方かなんかに放浪の旅に出ちまったらしくて滅多に公に姿は現さないが、一応イーサンて名前の三男がいる。」

アルトの手を取り、私は城壁の上によじ登った。アルトが先にぴょんと降りて、また私をサポートするのに手を出した。

「…お偉いさんの家にありそうな話ね。」
「実際シーランド家はこの街の五大名家の一つだからな。」
「…ふーん。やっぱり家柄がいいと子供はまともに育たないのかしら?」
「…」

アルトからの答えは返ってこなかった。