「バァカ、そうじゃねーよ。おめーに倒れられると、この嬢ちゃんが困るから言ってんだろうがよ。」
ケッと呆れたようにアルトが割って入った。
「てめーは、この異世界人の一応保護者だろーが。」
「そ、そうだね。」
気を取り直したブランが居直る。今日一日中、私に付き添い損ねて寝ていたアルトが言えることじゃないってツッコミは、置いといた方が良さそうだ。
「ま、今日は特に何もなかったからいいけどよ。あのガキンチョが仕事にもついて行ったようだから。」
「そうだ、仕事、どうだった?レイリーには、ルカには妙なことやらせないように釘を刺しておいたんだけど。」
「うん、大丈夫だったよ。」
私がそう微笑むと、ブランはホッとしたような表情を浮かべた。
「ごめんよ、本当に。昨日といい、今朝といい、まともに君の世話もしてやれないで。」
「そんな、いいのよ。私はもう十分してもらってるから。」
「でも、今朝だって困ったでしょ?本当に緊急の用事でどうしてもオレが…」
「本当にっ本当に大丈夫だから!」
ここまでブランに申し訳なく思われると、さすがに気が引ける。突然異世界に迷い込んだ私を、見返りもなくこんなに優しく接してくれてるだけで十分なのに。