「無防備な異世界人は、護身用に一つ、強力な”モニュメント”を持つことを許されたいるはずではありませんでしたか?カールトン中尉。」
一度は拗ねてむくれていたレイリーだったが、今度は勝利でも確信したのか、慇懃に答えるその口は嬉しそうに端が上がっていた。
カールトン中尉と呼ばれたその男は、一瞬悔しそうにした唇を噛んで、苛立ちを抑えるように長い自身の毛を撫で回すと冷静さをスッと取り戻した。
「…まぁ、今回は見逃してあげることにするわ。力づくでも良いのだけれど、ローズブレイドの坊やを怒らせても困るしね。」
そして潔く去るかと思いきや、カールトンは私に視線をやった。
「異世界人の侵入は噂で耳にしていたわ。確か三日くらい前だったわよね?こんなに早く出会えて、本当にラッキーだと思ってるわ。」
ニコリと笑ったその笑顔は、女のように美しいものであったが、どこか恐怖を覚えて私は背筋が凍りつく感じかした。
「…さっさと帰れ。」
「あらやだ。あたしはレイリーちゃんにも久しぶりに会えて嬉しいと思ってるのよ?」
ボソリと呟いたレイリーに、コロッと表情を変えて、カールトンはオネエ全開になった。さっきまでの温度差がすごい。
「こっちは全然嬉しくないから。」
「まぁ大嘘を。最近可愛くないわね。」
「うるさい。」
レイリーが頬をむくっと膨らまして赤らめている姿を見ると、この二人、仲がいいのかと思ってしまった。