「…急に何を言うのかしら、亜人。」
「私(わたくし)は今日、お金を払います。だから、だからそこの坊やとお嬢さんは見逃してやってほしいのです!」

私とレイリーは顔を見合わせる。これは一体…?

男はフンと鼻を鳴らして続けた。眼光は鋭いままだ。

「貴方の家賃滞納と、彼らの危険物の所持の件については関係なくってよ。」
「か、関係あるのであります!何故ならば、私が脅迫されていないということであれば、貴方様は、そこの坊やの持ち物を見る権利も触る権利もないはずです。」

ペンギンの指摘に、男は一瞬止まった。が、再び笑みを浮かべる。

「それでも関係なくってよ。危険物は回収する義務があたしにはあるわ。」
「彼らは一般人ではございません。坊やは、不動産屋を営んでおります。奥地に出向くのであれば、それ相応の準備が必要になります。よって、そのレリーフを持つことも許されるはずであります。」

ペンギンの的を得た発言に男がまたピタッと止まった。今度は不愉快さが顔に滲み出ている。

「ならば、こっちの小娘についてはどう説明するつもりかしら?ローズブレイドの紋章がついたステッキを持ち歩く必要のある不動産屋なんて、聞いたことがないわ。」

ギラギラとした瞳でペンギンと私たちを交互に男は睨んだ。何が何でも没収してやるという意気込みを感じる。

「彼女は、異世界人だ。」
「ほう?」

レイリーの答えに、男は口が引きつった。