「か、返してっ!」
ブランから貰った大切なもの。私がそう叫ぶと、男の口角がゆるりと吊り上がった。
「いけないわね。こんなもの亜人相手に使うつもりだったのかしら、不動産屋さん?」
男がレイリーの方を見ると、レイリーはだんまりだった。
「あら、言い訳しないの?だったら没収するわよ。」
「…ただの護身用だ。」
「魔力なんてほとんどない亜人に何ができるのかしら。このエリアごと吹っ飛ばすつもりだったんじゃない?特にコレ…」
男は私から奪ったステッキを見て、目を細めた。
「ローズブレイド家の紋章…。嫌だわ、またあの坊やかしら。」
男は一人何かを思い出してクスクス笑うと、スッと真顔になった。
「このステッキの用途は何かしら?護身用とか馬鹿げた理由はやめてちょうだね。」
「…それは、僕のじゃない。」
レイリーが苦々しく事実を言うと、男は向きはそのまま目だけ私を捉えた。