「君は異世界に飛ばされた。ここは君のもといた世界と違う。」



私が質問をしようと口を開きかけた瞬間だった。耳を疑うような発言が男の口から飛び出すが、静かに紅茶を飲む男の姿を見る限り、冗談というわけではないらしい。


「は?」
「信じられないのも仕方がない。でも事実なんだ。」

淡々と述べる男。最初はただのイケメンコスプレーヤーと思いきや、相当イタイのか、この男。私が訝しげに眉間にしわを寄せると、男は肩をすくめてみせる。

「その証拠があと3分くらいでわかるよ。」
「おっしゃている意味がさっぱりわからないんですが?」

さっぱりついていけず途方に暮れている私を尻目に、男はソファの背もたれの背後からステッキのようなものを取り出すと、投げて私によこした。宙に放られたそれを不器用な手さばきで、反射的に受け取ってしまった私はますます困惑する。

「それはお守り。これから襲ってくる魔物でいきなりゲームオーバーになられても困るからね。」


そう言うと、男は袖をまくり上げた。何かに備えているようだ。これから一体何が起こるというのか。私の脳みそは全く状況についていけていなかった。