私は身を起こし、床に座った形になると、改めて自分を囲む一人部屋にしては広すぎる部屋を360度見回した。

部屋はとても洋風だ。家具など全体的にコッテリしたような印象を受ける。天井は高く、10mくらいありそうだったが、上の辺りは暗く正確には分かり辛い。部屋を照らす光源は、唯一その暗い天井から垂れる大きなシャンデリアと、部屋の片隅にある小さなデスクのうえにあるものだけだ。部屋のサイドには床にベッタリつくほど長く、分厚いピンクのカーテンがこれまた天井からぶら下がっている。

部屋には一つの木製のドアがあるだけで他に入口も窓もない。部屋の片側には家具やら何やらがドサッと置かれ、重厚で古びた革製の本が其処彼処に散らばっていた。その中にソファが3つ、一人掛けの肘掛け椅子から、三人掛けのものまであり、男はその一つに腰掛けてまた紅茶であろう飲み物を飲んでいる。

一通り観察が終わった私は再び男に目をやった。視線に気がついた男はニコリと何故か笑ってみせるが、私はそれにどう返答すればいいのか答えを持ち合わせていない。


「まぁ、取り敢えず君が発狂しなくて良かったよ。そこが第一関門で、ある意味最大の関門だからね。」


男はそう言ってまた苦笑いしてみせる。この男、どうやらこの苦笑いが癖らしい。