見上げれば、そこにはブランが立っていた。微妙に口元は緩んでいるものの、目が笑っていない。
私は半日ぶりにブランに会えて内心嬉しく感じていたが、何故かブランはじっと動かないままあ私を見下ろしているだけだった。
どうかしたのかと、ふと隣を見れば、そうだった!何故か私は今、見知らぬの男の腕の中にいた。急いでバンとその男を押して離れる。
地面に倒れた男は、完全に眠っていたのか、数秒間があってから痛みで呻く声が聞こえた。
床に伏せた状態の男の顔はこちらからは伺うことはできないが、肩まで届く長い銀髪は印象的で、思わず目を奪われてしまう。
それにしても、この男は一体何者なのか。どうしてここにいて寝ていたのか。しかも、アルトはどこへ行ってしまったのか。
男が頭を掻いてようやく喋り出すまで、ブランは珍しく真顔で止まっていた。
「ってーなぁ…。」
態度の悪そうな声。何か聞き覚えがある気がした。
ブランはしゃがんでその銀髪の男の顔を覗き込んだ。
「お前何してる。」
「何って寝てたんだよ。ったく、無計画なおめーがわりーんだろーが。」
無理やり起こされたその男は、寝起きが悪いらしく、巻き舌も入ってさらにガラが悪い。
そんな男の様子など一向に構わず、ブランが続ける。
「オレは部屋探しにもっと時間がかかると思っていたんだが、レイリーに確認したら、とっくの昔に決まったていうから... 」
「あァ、割と早く決まったな。」
「だからって何でこんなとこで寝てる。」
「眠かったからだ。」
男の素直すぎる回答に、私もブランも呆れて無言だった。