「ブランがここに来なきゃ、ここで待ってる意味ないでしょ!」

そう言って、そこからテコでも動ことしないアルトの巨体を引っ張って、その場を離れさせようとした。

アルトも頭が良いようで、変なトコが抜けている。それともさっきのケイレブの件で、今日は最後の緊張の糸が切れてしまったのだろうか。

いずれにしろ、乗り気でないアルトを力で動かすのは無理そうだ。

「アルト起きて!」
「ヤダ。」

アルトは嫌だの一点張りで、私は途方に暮れていた。仕方なく、アルトにもたれかかって私も目を閉じる。

シルクのようなアルトの毛はとても心地よく、うっかりすると本当に私まで眠ってしまいそうだった。アルトの体温で寒いということもなく、天然の高級お布団だ。


私の腕は、抱き枕を探すように、アルトのフワフワの毛にしがみついた。いつしか、そのくらい深く眠りに落ちてしまっていた。




ようやく再び意識を取り戻した時は、一体何時間後だったか。天然のお布団にい優しく包まれて寝ていたと思ったのに、ふと寒気が襲って身震いをしたことでハッと目が覚めた。

眠る前までにそこにあった、ふわふわの毛はそこになく、そこには胸元が開いた白いシャツから覗く程良い筋肉と、鎖骨。

嫌なものを感じて咄嗟に身を離そうとした時には、頭上から声が降ってきた。



「何やってるの。」

見知った、でも何か不機嫌で低い声。