残業に対して、文句をたれるライアンの背中をリアムが押して騒がしい二人が部屋を出ると、私とライアンとアルトが部屋に残った。
「小娘よ…」
オースティンに差し出された手を握ったまま惚けていた私を見て、アルトが呆れて言う。
「なっ何!」
「こういう余計なことに巻き込むれるから、俺ァここに来るのは嫌だったんだ。」
アルトは、私がバッとオースティンの手を離すのをまじまじと眺めがら、ファッと大きなあくびをして伸びをした後、気だるげに立ち上がった。
「俺は活動範囲を広げるなだとか言わねーが…、今半分そう言われた感じだったな。」
「そ、そういう意味なのかなやっぱり…」
アルトがそう言うと、私はブランの態度を思い出してまたシュンとしてしまう。オースティンがそんな私の顔を覗き込んだ。
「保護者ってよりなんか、彼氏みたいに振る舞うよね?」
「か…!?」
とんでもないことをサラリと言われた私は、不意打ちを食らって声が裏返ってしまうが、オースティンはニッコリ笑っている。
「で、どうすんの?」
「そ、そんな…私はブランのこと…まだそんな風には」
「いや、そうじゃなくて。せっかくここまで来たけど、帰る?」
質問の意味を履き違えたことに、顔から炎でも出そうなくらい熱くなった。その様子をオースティンは楽しそうに、アルトは心底呆れて見ているだけだった。