私とアルトの関係が険悪になりつつあるのを察して、やや頬を引きつらせつつ、ヘラリと作り笑いをするブラン。

「えー…と、で、アルトはオレに変わってルカを守ってくれる事になるんだ。」

アルトは気に入らないという様子でフンと鼻を鳴らした。会って5分も経たないうちにすでに暗雲が立ち込めている。

「それから、いざって時は、オレを呼べるようにコレね。」

見覚えがあるステッキを渡される。昨日のモンスター討伐前に、お守りと言って渡されたものだ。

「これは?」
「護身用のものだけど、一発だけ強力な魔法を放てる。他にシンボルがないからこれに込めたんだけど、使い方は…アルト。」

そっぽを向いたアルトにブランが話しかけるが、不機嫌オーラが全開だ。

「教えてやってよ。」
「けっ」
「アルト。」
「いつから俺に指図するよーになったんだてめーは。」
「指図じゃない。お願いだ。彼女を死なせないでくれ。」

また物騒な物言いである。ハァ〜っとわざとらしく重い溜息を吐いたブランは嫌々承諾したようだった。

「アルトが機嫌を損ねているようだから、オレが代わりに軽く説明するが、このステッキで魔法が発動するとオレがわかるようになっている。つまり、緊急の時は、助けを呼ぶ役割と攻撃が一つでできる代物なわけだ。」
「なるほど…」

手のひらに小さく収まったステッキは、実際杖として使われるものというよりは、装飾用といった方が適切なほど華奢で軽かった。


一通りの説明で、ブランは安心したのか、ホッとため息をついた。