「何してんの。」
「オースティン、リアムがまた堅物してんだ。なんとかしてよ。」

本棚の暗闇の奥から、また同じ制服を着た男が現れた。制服は討伐隊のもの、あるいは司書か何かのものなのか。キョトンとした顔の、毛先が畝った黒髪をした男が言った。名はオースティンというらしい。退屈そうなグレーの瞳が私を見る。

「ナンパしてんの?」
「いや、ナンパっつーか!いいだろ、モンスターは倒したんだし。」
「駄目。帰るぞ。」
「いんじゃない?」
「オースティン!」

頑ななリアムに、オースティンが言うと、ライアンは目を光らせるがリアムは憤慨した。

「オースティンまで何を言ってる。」
「何で?その子、異世界の子でしょ?珍しいし、いんじゃない?」
「珍しさの問題じゃないだろう。…それに、副隊長が保護者ならまた会う機会もあるだろ。」
「堅いんだよ、リアムは。怪物にトドメ刺したのオレじゃん。たまには労ってよ。」
「だから、よくやったと言ったじゃないか。」
「そーじゃねーよ!」

リアムとライアンが噛み合わない口論をしている間に、オースティンは私に視線を置くとクスと笑みを口元に浮かべて言った。

「アンタも来たら?不動産屋なら、会議に出てるはずだから多分遅くまで帰ってこないよ。」
「来るってどこへ?」
「オレたちのオフィス。…というか、ただのつるみ場。」

未だリアムとの言い争いが収まらないライアンの肩を、オースティンはポンと叩いた。

「そこの子、オレ達と来たいらしいよ。」
「マジで⁉︎ ヤッター!」

私はまだ何も答えていないのだが、ライアンは歓喜する。