変な話だけど、ここに来てようやく思い出した。ここでの生活に妙に慣れ始めていたから、忘れつつあったことだった。
ブランにも始めに、ここの図書館は図書館なだけに、ありとあらゆる知識が積もっているわけで、異世界からの住人がどうして、どうやってこの世界にたどり着いたのかはわからなくても、地道に調べれば帰る方法はわかるはずだ、と。
その通りだった。私は、レイリーの仕事を手伝いつつ、帰る方法を探すつもり…だったのに。
「おい。それは帰れって言ってるみたいじゃないか、リアム。」
「誰だって居るべき場所というのがある。」
シリアスになりつつある空気を破るように、ライアンが悪戯っぽく言ったが、リアムはそれを一蹴した。
「えっと…。ちゃんと帰る方法は探してます。」
「だったらいい。」
リアムは当然だという表情だ。ライアンはちょっと苦笑いしている。
「さっきの話だけど、良ければ俺たちとこの後…」
「ライアン」
「黙ってろリアム。別にいいだろ。」
「勤務中だ。ナンパはやめろ。」
腕時計を眺めながら、リアムが答えたる。
「あと10分だろ。」
「戻るまでが仕事だ。それに、隊長も副隊長もまだ帰ってきてない。」
「俺たちこれでも公務員のはず。」
「残念だがそれでも残業はある。」
ガクンと項垂れるライアンを、リアムはぐいと引っ張った。
「帰るぞ、おい。」