図書館に入るなり、広い閲覧エリアのど真ん中で、狼の姿のアルトが不機嫌そうにしていた。

そして近づいて見れば、開口一番言ったのだった。

「大変だったな。」
「え、うん?」

意外にもそれは私の身を心配するもので。拍子抜けした私は思わず呆けた声を出してしまった。

だがその次の言葉は怒っていた。

「だけどオレも大変だったぜ。てめーの仕事を全部あのガキが押し付けてきやがってよ。」
「すいません...」

ぐうの音も出ない。ブランが色々してくれたようだけど、きっとアルトに皺寄せがくるところまでは頭が働かなかったのだろう。

おずおずとアルトを上目遣いで見れば、やはり怒っているようだ。慌てて項垂れると、見知らぬ人物の声がした。

「ま、そんな怒るなって」