「オレはこれからここで、アビゲイルとやる事があるから。本当は、怖い目にあったばかりの君についていたいけど。緊急なんだ、ゴメンよ。」

そう言って、ガランとした屋敷の前に降り立った、二人を置いて馬車は図書館へと走り出す。

アビゲイルと二人で屋敷でやる事ってなんだ、と一瞬考えたが、変な方向に行こうとする頭をブルンと振って切り替える。

ブランとアビゲイルの関係、ローズブレイド家のこと、ザッカリーの思惑...。それぞれちゃんと話さないから謎だらけだ。

納得はいかなかったが、どうするわけにもいかず、馬車の中から落ちかけている太陽が郊外の街を美しく照らす様子を眺めていた。