「そこで君は生活しながら、元の世界に帰る手段を探るといい。ここは図書館という性質上、知識の宝庫でもある。安全エリア内はどう移動してもらっても構わないし、このエリア内だけでもすごい蔵書数だから、きっと有効な情報が見つかるはずだよ。」
ブランの優しい笑みが、緊張した私の心をほぐす。優男でハンサムな彼は天性の癒し系である。
「ブランはどうするの?」
「オレは通常勤務だよ。残念だけど、安全エリア内にいることはほとんどないからね。ルカのことは他の奴が面倒を見てくれるよう頼んでおくよ。」
「そんな、これ以上は迷惑かけられないわ。私一人で大丈夫だから。」
「いいや、オレには責任があるからね。安全エリアは概ね安全なはずだけど、君は何より異世界からの異邦人。何が起こるかわからないから護衛はつけておくよ。」
「護衛って…」
やや物々しい響きの言葉だ。私が表情を強張るのを見ると、ブランは大丈夫、と念を押すように笑いかけた。
「イカつい野郎について回られるのも、なかなか落ち着かないだろうから、もうちょっと可愛いのに頼んでみたよ。」
「おいで、アルト。」という、呼び声と共に、ピカッと青い閃光が走り、本棚の背後からのそっと出てきたそれは…
「可愛い!」
「昨日、君が眠りに落ちてから、急いで頼みに行ったんだ。」
真っ白なシベリアンハスキーらしき犬が出てきた。”らしき”というのはこの犬、異様にでかい。馬くらいある。背中に普通に乗れそうだ。
ふわふわの綺麗な毛は真っ白で、ウェーブがかかっており、やや長毛だ。ぴんと立った耳に、丸っこい青い目、長い尻尾が特徴的だ。
愛らしすぎて思わずハグしたくなる。
が、その犬が次の瞬間口を開いた。
「さわんじゃねーよッ」