「当然、君一人では、昨晩モンスターが襲ってきたようなおっかない場所には置いておけない。図書館内でももう少し安全な場所で生活してもらおうと思う。」

そう言って、ブランがポッケから取り出したのはこの図書館の地図のようだ。

「…広ッ!」
「これでも全域を表したものには遠く及ばない。」
「いやいや、これ建物内の地図ってか、”地域”の地図ってほど広いよ!?」

私の妥当な疑問に、答えに困ったブランはうーんと唸った。

「そう、広いんだこの図書館は。…とてつもなく。」
「どんな図書館よ。」
「だからこそ、危険エリアも広いわけで、そこから君は遠ざけておきたい。」
「安全なエリアっていうのはあるの?」
「勿論、オレたちが誇りをかけて守っているからね。」

ブランは再び地図に視線を落とす。

「この図書館は、中央の入り口に近いほど安全性が増す。ここのエリアは、一般の人も入ってこられるエリアで、子供からお年寄りまで安全に書物を読むことができる。主に販売、貸出、書き写しを容認しているエリアでもある。このエリアに魔物が入ってくることはあり得ない。そして、このエリアには昨晩のような部屋がたくさん常備されている。」
「…そういえば、あのモンスターが侵入してきた部屋ってなんなの?家具とかもあった立派な部屋だったけど。」
「理由は色々あるのだけど、昔は王族が使っていた部屋だからね。シャンデリアや鏡台といった家具は、アンティークでそのまま残っているんだ。」
「で、それを私が使ってもいいの?」
「他に使う人もいないしね。」

くるくるっと広げていた地図を丸めると、ブランはそれを私に手渡した。