しばらくは恐ろして振り返ることもままならなかったが、意を決して徐にそちらに体を向ければ、昼間広場で見た男が笑みを浮かべて立っていた。


部屋はベッドライトの光しかないような明るさだったが、間違えようのない派手な容姿と、ここに来て初めて気付く微かなバラの匂いで私は確信する。

疑問は山ほどあったが、私は一番気になった質問をぶつけた。


「ザッカリー・シーランド...何故こんなところに?」
「何故?ちょっとした視察だよ。」

事もなげに答えるザッカリーに、私は混乱と静かな恐怖を感じていた。