「なにそれ?戦う図書館員?」
「そうだね。戦闘が主な仕事だね。」
飄々と答える様はすごく滑稽だ。どこの世界にそんな図書館員がいるものか。
「だから君のいた世界とはいろいろ違うって言ったじゃない。」
私が訝しげな表情を浮かべると、バツが悪そうにブランは言った。
「ちなみにここは図書館だよ。オレの家じゃないから。」
「え?」
どんな豪勢な家に住んでコスプレごっこしてんだよ、と一時は思ったものの…図書館?
「異世界の入り口はこの図書館のどこかにあると言われている。オレが前、世話した人も勤務中に出会ったんだ。」
「前にも、この世界に迷い込んだ人がいたの?」
超展開にオタつく私をよそに、考えてみればブランの態度は初めから首尾一貫という感じで落ち着き払っている。まるで彼にとっての異世界の住人、すなわち私のような人間をよく知っているかのようだった。
「たまにあることだからね。オレが世話したのは今まで4人だけど、まぁ、みんな初めはルカみたいな反応でなかなか信じようとはしなかった…一人を除いて。」
一瞬、思い出に耽ったのか、言葉を切って真剣な表情になったが、次の瞬間またヘラッとしてブランは続けた。
「オレの主な仕事は、図書の貸出とか普通の図書員としての仕事と、さっきみたいな討伐、それからもう一つ、君みたいな迷い人のお世話。」
キラッと目を光らして、チャーミングに話すブランは意外に可愛らし…ってそうじゃない。そんなにしてもらったらなんだか悪いじゃない。
「なんか至れり尽せりって感じね…そんなんでいいの?」
「オレ個人の意思っていうか、この街の法律で決まっていることだし。いや、でもオレ個人の意思でもルカは助けたかもしれないけど…。」
なにそれ。最後に付け足した言葉の意味は何なのってちょっとドキッとするけど、ケラッ笑ったブランの顔は無邪気そのものだった。